世界について知りたいなら


“世界について知りたいなら、細部を見過ごしてはならない”

“博識は分別を教えない”
――ヘラクレイトス



何万冊本を読んでも、どれだけのものを見聞きしても、知恵や分別が宿るとは限らない。
どれほどの情報を蓄えようとも、それらを処理して活用する能力やルールや感覚を備えていないと、宝の山も山積する塵芥と化す、という感じでしょうか。フレームとは少し違うか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%95%8F%E9%A1%8C

ならば、そんなに本を読む事も出来ず、さしたる見聞もなく、知恵も分別も無い者はどうしたらいいか……
仕方ない、酒でも飲むか……。
もう4月も後半……嘘だと言ってよ(略。

地震が起こって何やら一大事ではありますが、自分が被ったわけでもないのに大騒ぎしたり、流言飛語を弄んだり、惑わされたり、無用に悲嘆に暮れてもしょうがないのでしょうから、いつも通り静かに暮らすのが良いのでしょう。
人々の騒ぎぶりを見るに、技術は進歩してもその使用者には何らの進歩も無いのではないかという疑念が……。
この島が定期的に盛大に揺れて滅茶苦茶になるのは立地上の必然であり、山も島もまさにそういう現象があるからこそ存在するのでしょうし。となれば、せいぜい己の居所周辺の地形の確認、部屋の家具の固定、備蓄の食べ物と水と酒、逃走経路と避難場所を確認するくらいしか私に出来る事はないのでしょう。

自粛だとか不謹慎だとか喧々囂々やるのは情としては分からんでもないですけど、そんな事に傾注したところで誰一人救われはしないでしょうし、何らの生産性も無いでしょうから、私は例によって例の如く、飲んで喰って、本を読み、音楽でも聴いて妄想に耽り、絵を描く事と致します。

功徳の足らぬ私が今更、天に祈ろうが何万時間黙祷しようが人的損害は微塵も回復せぬだろうし、壊れたものも戻りはしない。
それよりも九州の鳥や酒を買えば幾許かはその経済に貢献するのでしょうし、私も美味を堪能する事ができる。
むやみに落ち込むよりはその方が皆にとって良いのではなかろうかと。
より多数の人の幸福と快楽を最大化する方が建設的なのでは。
こういう考え方は独善的、無味乾燥、冷酷で非人間的過ぎる、のですかね。
いずれにせよ、地鶏を肴に焼酎でも飲んでよろしくやると我が脳内元老院は決定したのであります。


・色々見たり、やったり。

甲鉄城のカバネリ

素晴らしい作画、良い雰囲気、デザイン。
和風スチームパンク、装甲蒸気機関車、城塞都市、ゾンビ、という最高の題材の詰め合わせですが……。
1話を見た限りでは何だか設定が荒いというか状況描写の詰めが甘い様な。
見渡す限りの荒野を危険なカバネ(ゾンビ?)が覆い尽くしていて、人間は城郭都市の様な壁の内側に立て籠もって命脈を保っている。各都市間の連絡や物流は線路上を行き来する装甲列車が担っており、人々は日々命懸けの旅と戦いを強いられている、と。

魅力的な設定・導入ではあるのですが、そんな脅威だらけの場所で鉄道の保線作業はどうしてるのか(今後描かれる?)、とか検疫(この場合、列車が都市に入城する際のチェック)のシステムが穴だらけで危険すぎる、とか何だかグダグダの様な気が。
カバネ及びカバネに噛まれて感染した者の侵入を許さない為の措置なのに、チェックを行うのが都市の中の施設というのはおかしいのでは。さらには列車を都市の手前で強制停止させる、あるいは停止しない車両を脅威と見做して確実に排除できる設備やシステムが全く構築されていないのは危機的な世界を描写するにあたり説得力が足るのか……。

検疫が共同体全体の生死に関わる重大事である筈の世界でこれは一体……。製作する人達の中で重要なキーワードであろう検疫(quarantine)の語源(quaranta giorni、40日間、ペストの流行を受けてヴェネツィア共和国が実施した入港船舶への40日間の強制港外待機及び隔離 )と経緯を知る人、調べる人がいなかったという事ですかね。異世界だから成り立ちは別なのでしょうし、穴が無いと話が生起しないのかもしれませんけど。
贅沢な食材を使っているけど調理が……という様な事にならんといいですけど。
そういう細部は気になるのですけど、面白くはあるので続きを見ようとは思います。

ばくおん

二輪メーカー各社が協賛しているけど、作品内の各社バイクへのブラックジョークは大丈夫なのか。
ドゥカティはすぐ壊れるとか言われちゃってるけど、よくOK出したなドゥカティの中の人……度量が大きい。
原作と変わらずやりたい放題で二輪の掲示板の内容を漫画にした様な感じですかね。二輪への愛情と自虐と揶揄が入り混じった様な面倒臭い冗談を鷹揚に楽しめる人にはお勧めです。
皮肉や冗談を真面目に受け取って気に障る人には向かないかもしれません。

二輪の作画も音響も良いですし、二輪乗りなら尚更ニヤニヤしながら見られるでしょう。
CB400SFは教習所で乗り慣れていたからという理由で購入したので、作中で指摘されている二輪乗りにありがちな話という奴はまさに自分だという……。我が二輪道の初代愛馬だったのですが、どこぞの峠で大破……我ながら愚かな事をしたと反省しております。あれから10年いや9年、以降無事故ですが今後もほどほどに走って行きたいものです。

CB400SF→W650→CBR600RR→現在CBR1000RR(2012年型)結構乗り換えておりますが、CBR1000RRには十二分に満足しているので(というか私には到底あのスペックを使い切る事など出来ない)もうずっとこのまま壊れるまで乗り続けるでしょう。という様に己の履歴を振り返りながら見るのもまた良し。
ホンダ乗りですが、鈴乃木さんとツーリングしてスズキとカタナの素晴らしさを教示して頂きたい
(いや、純粋に紳士的に話を聞きたいんですよ、えぇ紳士的な意味で)。

ジョーカー・ゲーム

昭和10年代、中野学校をモデルにした謀略や諜報に携わる者を訓練する機関を舞台にした話。年代と舞台設定が好みの方にはよろしいかと。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E8%BB%8D%E4%B8%AD%E9%87%8E%E5%AD%A6%E6%A0%A1
特務機関、1930年代とか魔都上海とかそういうキーワードにピンとくる人なら。
そういや閃光のナイトレイドとかいうのもありましたな、懐かしい。
不穏ですが魅力的な時代です。いや、調べれば魅力的でない時代など無いのでしょうけど。

マスケティアーズ

NHKでやっている三銃士のドラマ。
多分に演出されており、装備や衣装も17世紀のそれとは少しずつ違う様に思いますけど。結構面白い。
刑事フォイルが終わってしまったので次はこれを見ます。
マスケット銃兵が隊列を組んで一斉射撃する迫力の戦闘シーンは……多分ないでしょうけど。


・ゲームをする時間をくれ

Far Cry Primal
http://www.ubisoft.co.jp/primal/
最近はめっきりゲームをする時間が無いので、死と破壊と暴力と殺戮からは遠ざかっていたのですが、帰宅途中でうっかりゲーム屋に入り……気がついたらFar Cry PrimalのPS4版を買っていたという……。
紀元前1万年の世界を逞しく生き抜くのがテーマです。
これは堪らん……引き籠ってじっくりやりたい類のゲームですな。

自分が科学や文明のおかげでこれまで生きてこられた事は自明であり、今更それを手放してはろくに生きていく事もできないのだろうけれど。たまには原始的な世界に没入するもよかろうと。

たぶん抗生物質や眼鏡やコンタクトレンズの無い時代に私が生まれていたら、幼少期にただ一度入院した原因であるところの肺炎で容易く死んでたでしょうし、あるいは生き残ったところで極度の近眼で何も出来ずに転がってたでしょうな。
生産余剰の無い世界、毎日の活動可能時間と体力のほとんどを皆が食料の獲得に費やしているような厳しい時代に、何一つ生産せぬ穀潰し、無為徒食の者が生存を許されたかは興味深い研究テーマではありますけど。

そう考えると現代は凄い時代でありますな。何しろよほどの失敗国家でなければそうそう飢える事はないし、王侯貴族でもないのに柔らかい肉を食ったり、冬にコンビニでアイスクリームを買って暖かい部屋で食べるとかいう無茶苦茶な無駄遣いが出来る。
人類史上稀に見る栄養を何ら特別なところのない民草が貪り喰う事が出来る上に、無用に肥える事すら出来て、さらには痩せる為に努力する者すらいるという贅沢ぶり……。昔の人が知ったら驚き呆れるか、相当に羨ましがるでしょうね。

さて、ゲーム内容としては極めてシンプルで、狩りをして食べ物や道具の材料を集めたり、危険な肉食獣と戦ったり、敵対部族と縄張り争いをしたり、動物を飼い馴らしたり、自分の帰属する村を建設、防衛したり。とても原始的ですけど楽しい。
狼を相棒にして一緒に狩りをしたり敵対部族と戦ったりするのはなかなかグッと来ます。

棍棒でぶん殴られたり、訳の分からない病気や風邪にかかったり、怪我が治らず壊死したり、昔の人はぼこぼこと生まれ、そしてあっさりと死んでいたのだろうなという雰囲気が良く出来てます。限りなく野蛮で動物的だけれど、しかし他の動物を圧倒する知能によって道具や火や計略を用い、既に組織と社会を形成しつつある。
単体では明らかに虚弱な動物である一方で、極めて強力な種族であるというのは面白い。

深い森や山や川を駆け巡り、ただ生き抜く。地球という概念はおろか、正確な地図(地図の概念はあったのか?)も無いのでしょうから地理認識は現代人と全く違うのでしょう。自分がどこにいるかもよく分からないし、○○から何年経ったとかいう歴史の類の
時間感覚もおそらく現代人とは大分違ったものだったでしょうし。見ている世界がまるで違ったでしょう。
こういう時代が何万年も続いたのだろうな、と太古の昔に思いを馳せる事が出来るゲームであります。
太陽や月、炎、闇や風、水や植物、獣に神々を見出す訳が何となくわかります。

こういう昔の時代をテーマにしたゲームやら書籍やらを見ていると(無論、ゲームは誇張ありきですけど)昔の人の身体能力や注意力、記憶力、洞察力は今より相当に研ぎ澄まされていたのではないかと思うのであります。
かつてはその必要があったからそうだったのでしょうし、今は乗り物や情報端末の類の機械が人間の能力を補助・拡張・増幅している分、現代人は道具を失って丸裸になったら極めて貧弱で無能でしょうね。栄養豊富なので体格は良いかもしれませんけど。

今いきなり森に放り込まれて生きろと言われても、食べ物を取る事も毒と薬草の区別も出来ないでしょうし、火を起こせるかどうかすら怪しい。何かを手に入れると何かを失う、当然の事ですけどそういう原理をしみじみと感じました。人間は前進しているとか、後退しているとか、進歩しているとか、退化しているとか、そういう事ではなく、ただ状況に応じて変化しているだけなのかもしれませんね。あとは停滞、というのもあるか。


・戦い、年月と感性の隔たり、同じもの、異なるもの

今回はこんな感じで。


トラヤヌス帝が極めて精力的で有能な皇帝であった事は間違いありませんが、東方遠征への深入りは現代の軍事・政治・経済的観点から見ればおそらく不要な戦争だと判断されたのではないかと。情報収集の不備、占領政策の困難さ、当時も反対派はいたようです。アルメニアへのパルティアの介入に対する一定限度の牽制は防衛戦略上、必要だったとは思いますが。

東方の広大な土地においては一時的勝利は可能でも反乱や文化的摩擦により長期保持する事は困難。それを抑えるために17個軍団以上の戦力を東にずっと貼り付けておく訳にもいかんでしょうし。行って帰ってきて戦費を会計したら、その収支はどうなっていたか。(ローマとパルティア、二大帝国の激突三百年史P222~参照)結果的に見ればローマの最大版図は一瞬の記録を更新したに過ぎず、多くのローマ人、属州民、そして東方の人々の犠牲と苦労、莫大な戦費は無に帰したと。

同時代にも実益無き政策の不毛さを批判した者もおり、公的に誇示されるような戦果はもたらされなかった事を知る者もいたようです。しかし、当時の多くの人間にとって例え一時であれ勝利すること、敵を屈服させる事(特に長年の宿敵なら尚更)、そして栄光と言う捉え所のない概念を手にする事は、数え切れぬほどの命を賭し、大金を掛けてでも挑戦する価値のある事だったのかもしれません。当然ながら21世紀の人間は費用対効果や現代の道徳観念・生命倫理に沿ってものを考えるのですが、かつての人間が同様であったと断定するのもまた難しいのではないかと。勿論、どんな時代にあっても人は命や金を惜しむものでしょうけど、その優先順位や程度の差、色合いは様々に変化したのではないでしょうか。

ローマ人の最終目的は長期に渡り、東方を支配し、従属させる事であり、パルティアと雌雄を決する事であったのでしょうが、それは達成されませんでした。仮に達成されたとしても、それはパルティアより東の新たな敵と国境を接する事を意味し、終わりなき戦いが帝国を包むという状況は何一つ変わらなかったでしょう。皮肉なことに度重なる戦役でパルティアを疲弊させ、それを弱体化させたローマは同じ地にササン朝ペルシアという新たな、そしてより強力な敵の出現に直面することになったのです。

クァルトゥスは束の間の栄光の後に訪れた悲惨な撤退戦を経て、同僚を失ってなおトラヤヌス帝こそ至高の皇帝である、と考えているようですが、その本意の仔細を現代の人間が正確に理解するのは困難かもしれません。某風呂漫画に謳われる様にローマ人と現代人の思考や文化には少なからぬ近似が見られますが、それでもなお30-60年程度の時間差、祖父母や父母の世代のものの考え方や生き方すら、ときとして埋め得ぬ隔たりを覚えるのだから、2,000年の時の隔たりには容易には推し量りがたい、あるいは論理的に理解することはできても受け入れ難い相違というものはあるでしょう。

その時代に生き、その世界の空気を吸わなければ分かり得ぬ事、そういうものがきっとあるのだと思います。
だからこそ歴史は面白いのでしょうし、恐ろしくもあるのでしょう。


さて今回はこの辺で。
ローマと軍団に無敵のマルスと全能なるユピテルの助力あれ!
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軍団兵履歴

Legionarius

Author:Legionarius
主に世界史・戦史(東西問わず)の絵を描いております。

形式:Legionarius
状態:製造年月日から30年以上経過
使用燃料:Laphroaig,Bowmore,
Ballantine(12年が好ましいが財布が薄いのでfinest)
エンジン形式:惰性型酒冷4ストロークバルブ108気筒
始動形式:諦念あるいは深い溜息
搭乗機:CBR600RR07白→CBR1000RR2012に機種転換(乗り手に過ぎる良い機体ですがハイオクは財政が……)

音楽:(Bill Evans, Miles Davis, Dvořák, Linkin Park, Rammstein, Killswitch Engage, Enigma外)気に入れば何でも。

書物:ノンフィクション、歴史(ローマ史、古代ギリシャ,WW2外)、SF(ホーガン、ハインライン外)、最近はOsprey社の本ばかり。主にマクブライド先生のやつばかり。

漫画:(大陸軍は世界最強とかアララララーイとか)雑食。

ゲーム:ROME TOTAL WAR、MEDIEVAL TOTAL WAR
     CALL OF DUTY、S.T.A.L.K.E.R、SILENT HUNTER外

好きな陛下:Marcus Aurelius Antoninus、Flavius Claudius Julianus
好きな甲冑:ロリカ・セグメンタータ
好きなヴァンツァー:フロスト
好きなマクナブ:受領通知!!、カチカチ、カチカチ、続刊はいつですか。
以下、好きなギボン、サトクリフ、パウルカレル、スティーブンハンター、フォーサイス、ルカレ、エルロイなどと八万行に渡って続くので割愛。

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