月下独酌


月下独酌

  花間一壺酒  
  独酌無相親  
  挙杯邀明月  
  対影成三人  
  月既不解飲  
  影徒随我身  
  暫伴月将影  
  行樂須及春  
  我歌月徘徊  
  我舞影零乱  
  醒時同交歓  
  醉后各分散  
  永結無情遊  
  相期獏雲漢
  ――李白  

一人酒壷を抱え、花を愛で、月と己と己の影を三者に見立て飲む詩。
まさに幽玄、優雅なり。

これも良いですね。

山中與幽人對酌
兩人對酌山花開
一杯一杯復一杯
我醉欲眠卿且去
明朝有意抱琴來

山中にて世捨て人と飲み
山の花を愛で
杯を重ね
酔って眠くなったので
明日の朝、気が向いたら琴でも抱いて来てくれ

酒は好きだけれど、それを人に強要するのは下品の極みです。
そもそも人に飲ませる分があるなら私がそれを…いや…そういうことではなく。
共に杯を傾けられる人と巡りあい、共に卓を囲み酔い痴れる事が出来るならば、それ以上の幸福はないけれど、同席した人に常にそれを望むのは国法の酩酊防止法二条に言及するまでも無く……卑しい振る舞いでしょう。
飲酒主義は自由と表裏一体であるという当ページの根本的原則に則れば、他者の自由を尊重することは当然の振る舞いであり……(以下数千字に及ぶ論考が続くが省略。

何にせよ、自分と共に飲んでくれる人がいるのは良いことですが、それは両者の合意や積極的な望みでなければ無意味に等しいでしょう。取引や利害や義理で付き合うのではどんな料理や酒も不味くなるだけです。
逆に言えば、大した事のない料理も酒も楽しき人々と共有すれば味わい深いものとなるのでしょう。
立場上断れない相手や義務的な付き合いでしか飲む相手を見つけられない、というのはとても寂しい事です。それならば一人で飲むほうがよほど楽しく豊かな時間を過ごすことができるでしょう。

神経と脳細胞を緩め、そして痛めつけるこの魅惑的な悪魔の水は緊張を緩めるものであって、他者に不要なストレスを強いるものでは無い、とそう思うのです。

そんな具合で土曜の夕日を眺めながらラムのカクテルなぞで喉を潤し、日の沈まぬうちから恥ずかしげも無く酔っ払っておりました。夕景を背に連なって飛ぶ鳥や電柱に羽を休める烏、神々しく光る雲の縁もまた独特の趣がありますね。

昼の光の下では白けて見えるそれも、夕には違ったように見えるものです。東京の街の色彩や質感はばらばらで、無遠慮な極彩色の看板や安っぽい合成樹脂が、出鱈目で調和の崩れた景観をそこかしこに露にしています。
それでも夕にはそのほとんどが不思議な調和に染め上げられ、そう悪くない景観を見せてくれます。

普段はあまり好みでないものも時機によっては美しく見えるものですね。


・お絵かき

 趣味全開。恥ずかしげも無く。
 いや、普段は社会の理に従って静かに暮らしているのだから、私的に何かをする時くらいは遠慮なく趣味全開でありたいものです。脳みその中身丸出しみたいな勢いで。本棚を見るとその人の頭の中を多少なりとも覗く事が出来ると思うのですが、私の本棚はと言えば……漫画、ローマ史、オスプレイ、戦史関連書籍……一部どころかほとんど全部露出してるんじゃないのかこれは……。絵はその傾向がさらに顕著になりますね。おまけに長ったらしい文章まで……露出癖か!

今回はこんな感じです。
ローマ軍の物語Ⅸ

ローマ軍の物語Ⅸ 文字入り

以下pixivより

ローマ軍の物語 Ⅸ “銀鷲の止まり木”

第Ⅵ軍団分遣隊はパンノニア、ダルマティア、モエシアを歩き回り、幾つかの要塞と駐屯地を巡った。全てを見た訳ではないが、軍団の基地は世界中どこも同じ様な形をしているようだ。十字路、本営の位置。そして付属の街。ローマほど豪華ではないけれど、地方の都市には大体何でもある。酒場も浴場も病院も劇場も商店街も。

それで満足できない様な強欲で見栄っ張りな連中がローマに内乱の災いをもたらす、と祖父は言っていた。それが本当なら俺が内乱の首謀者になる事はなさそうだ。ローマは恋しいが小奇麗な風呂も、まあまあの酒も読み切れない程の本もあるし、何より地元の方言で話す女の子達が可愛い。何もかも俺には十分、足るを知る者こそ富める者という奴だ。

女と言えば、都会の擦れっ枯らししか知らない俺には地元の娘が随分純朴そうに見えた。祖父が昔話をすると、決まってそういう女にこそ気をつけろ、と祖母の方をちらちらと見ながら笑っていたが、どうやら我が家の秘密は地方の軍団基地にあるらしい。クイントゥスは手当たり次第に声を掛け、まるで帝都育ちの軽薄さの宣伝担当の様だったが存外にモテた。幸運の女神は積極果敢なものに微笑むというのは本当らしい。だが奴の真似はあまりお勧めしない、クイントゥスがオウィディウスを読んだのかは知らないがアレはそういう”稀有な才能”の持ち主なのだ。俺は祖父が残した貴重な箴言を無駄にせず、相手をよく見極めて”果敢さ”を発揮する事にした。無論、祖父が”過ち”を犯さねばそもそも俺は存在しなかった訳ではあるのだけれども。

その日の訓練は終始“和やか”な雰囲気で行われ、ウァレトゥディナリウム(軍団の病院)は怪我人で大盛況だった。軽傷者は後回しにされ、腕に小さな切り傷を負った俺は隊長に紹介された民間の医者に診てもらう事になった。そこで俺は女神ミネルウァと出会った訳だ。最初は俺より一つ年上の愛想の無い女の技量を疑っていたが、アスパシアはアスクレピオスが憑依した様な鮮やかな技量の医者だった。素早い消毒や丁寧な縫合も、処方する薬の分かり易さも俺の知る医者のそれとは比較にならなかった。

ほどなくして俺は軍団の病院に行くのをやめ、わざわざ遠くにある彼女の診療所に行くようになった。以降、俺の傷病率は“何故か”増加し、アスパシアとの接点も増えた。いつもは必要な事だけを口にする物静かで淡白な彼女は、関心事に話題が及ぶと別人の様に饒舌になった。アスパシアは俺の知らない言葉や文字、小難しい医学専門書や異国の詩歌、そして世界各地で起こった沢山の事を教えてくれた。ヒスパニアやブリタンニアの都市の事、アレクサンドロス大王の到達したインドの事、樽に住む妙な哲学者の事、生きたまま焼かれた僧、全てが新鮮で俺の好奇心をかきたてた。特にメナンドロス1世と僧侶の話は俺の知的好奇心を大いに刺激し、遠い世界と哲学的な問いへの興味関心を抱かせた。

勿論、質実剛健にして滅私奉公を信条とする“模範的な”軍団兵を絵に描いた様な俺は、ギリシア人の目を瞠る様な知性と教養と技術に感銘を受けたのであって、断じて無知な俺をからかう様に見つめる魅力的な鳶色の瞳と、その他諸々に魅了されたのではない。当然、患者に向かって屈み込む彼女を眺めて目の保養を図ろうなどという不埒な思惑などあろう筈もなかった。本当だ、眼医者は隣の区画なのだから。

ある日、意を決した俺は親睦を深めたい旨の手紙を認めて、帰り際に彼女に手渡した。ムーサに祈りを捧げて書いた俺の最高傑作だ。アスパシアは一瞬だけ驚き、俺の目の前で“渾身の力作”に目を通し、何かを察した様な顔をすると休診日にまた来るように、とだけ告げて仕事に戻った。

翌日、彼女はくすくすと意地の悪い笑みを浮かべ、俺の手紙をそのままつき返してきた。とてつもなく嫌な予感がしたが、予想は大きく裏切られた。俺の“最高傑作”がびっしりと添削の文字で埋まっていたのだ。文法と綴り、引用の間違いが計9箇所、より美しい表現と構成の調整が3箇所、ご丁寧に出典や参照資料まで記されていた。要するにほとんど間違えていた。恥ずかしさのあまり、得意の穴掘りを始めて埋まりたくなっていた俺に、彼女は素晴らしい提案をしてくれた。週に1回だけ文章の講義をしてやろうと言うのだ。代金は1回につき上等な葡萄酒を2杯奢る事。

子供ならまだしも、ローマ人がギリシア人にラテン語を習うなんて格好がつかなかったが、俺は即座に条件を呑んだ。
想像した展開と“多少”異なっていたが“作戦目標”は達成されたので問題無しだろう。俺は連日の訓練の疲労も忘れていつになく軽い足取りで兵舎へと帰った。
――つづく――次回、ローマ軍の物語、第10話”セステルティウスこそ神々と皇帝の恩寵”ROMA AETERNA EST!!

軍団基地:各地の属州に駐屯地が存在した。敷地の周りには兵士達の家族(婚姻禁止の兵卒は内縁の妻と子など)や商人、地元民が住みつき、都市を形成した。現在も西欧諸国には軍団基地が基礎となった都市が存在する。ドイツのケルンはコロニア(植民市)が由来。

風呂:ローマ人は世界各地に風呂を作った。最近は日本の風呂と時空を超えて繋がっているらしい。

幸運の女神:フォルトゥナは前髪を掴まなければ捕まえられない。通り過ぎた好機は二度と戻らない。

オウィディウス:詩人、”恋愛術”なる指南書でも知られる。

病院:軍団の病院も民間の診療所も大小様々の医療施設が存在した。但し古代ローマには医師免許制度がなかったので腕前の優劣に極めて大きな差が生じ“優れた医者”と“医師と称する処刑人”を慎重に見極める必要があった。そうした経緯からも医師はあまり好ましい職業とは見られなかった。詐欺師や藪医者が少なくなかったのだろう。発掘された医療器具は極めて精巧に出来ており、現在の医師が見ても何に使うものかすぐに分かるほどだとか。一方で迷信やただのまじない、効果の無い薬の処方も横行していた。軍団の病院では平民では期待出来ない様な高度な医療を受ける事が出来た。仕事柄、技術と経験の蓄積は際立ったものだったのだろう。

アスクレピオス:ギリシア神話に登場する名医

樽に住む:哲学者ディオゲネス、世界を征服したアレクサンドロス大王にすら羨望を抱かせた男。狂えるソクラテス。

焼かれた僧:カラノス、インドのバラモン僧。アレクサンドロス大王に随行し、老衰すると自ら火葬を望み、希望通りの死を遂げた。

メナンドロス1世:前2世紀~後1世紀頃、インド北西部を支配したギリシア人のインド・グリーク朝の王の一人。文武両道の哲人王であり、インドの僧ナーガセーナとの問答で知られる。東洋と西洋、仏教の智慧とギリシアの叡智が出会う壮大な逸話に興味のある方は“ミリンダ王の問い”でググるべし。

ギリシア人:軍事的、政治的に敗北し、ローマの支配下に入ったギリシアであったが、技術、知識、教養、文化においてはローマを征服したと表現されるほどに影響を与えていた。教師、医師など知識を要す仕事には多くのギリシア人が関与していた。どうやら軍団兵クァルトゥスもギリシア人に征服されつつあるようだ。

ムーサ:あるいはミューズ。ギリシア神話で文芸を司る女神達。

以上

 アスパシアと言う名前はペリクレスの聡明な愛人の名、それから2世紀に活躍した女性医師の名から採りました。
 医師についての記載は古代ローマのヒューマニズムという本を参考にしています。ローマ人の教育に対する考え方、医療や医師のあり方、軍医について、などあまり他には見られない事を研究した本なのでお勧めです。
 街や家はポンペイやポンペイの“外科の家”のイメージでしょうか。医療器具が発見された家です。
 
 男であれ、女であれ、物知りな人や明敏な人は話をしても共に行動しても楽しいものです。少ない言葉でも話の本質を見抜き、刺激的な反応を返してくれたり。もっとも私のコミュニケーション能力は大層アレなので、そういう人でないと要旨を掴めない、要領を得ぬ、訳の分からない話をしている可能性が高いという気も……。やはり原因は自分か。
一丁前に人を評する前に自己を振り返れよ、と。

 次は古代ローマの酒場でも描こうと思います。
 計画性無く進めているので構図も決まっておらず、資料もあまり集まっておらず、一月くらい苦闘するかもしれませんがそういう苦労は全然つらくはないのです。一銭にもならずとも楽しい。

 それにしてもローマ軍の物語と銘打ったわりにいつまで経っても平和ですね。ローマの平和ですね。
 でも大丈夫です。後半は戦に次ぐ戦でもう勘弁してくれ、という状況になるでしょう。
 ダキア戦争、パルティア戦争、バルコクバの乱、この世の地獄が待っているのです。
 

 さて今回はこの辺で。続きが描けたらまたお会いしましょう。
 ローマ市民ならびに元老院議員、そして軍団兵諸君にマルスとユピテルの助力あれ。
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軍団兵履歴

Legionarius

Author:Legionarius
主に世界史・戦史(東西問わず)の絵を描いております。

形式:Legionarius
状態:製造年月日から30年以上経過
使用燃料:Laphroaig,Bowmore,
Ballantine(12年が好ましいが財布が薄いのでfinest)
エンジン形式:惰性型酒冷4ストロークバルブ108気筒
始動形式:諦念あるいは深い溜息
搭乗機:CBR600RR07白→CBR1000RR2012に機種転換(乗り手に過ぎる良い機体ですがハイオクは財政が……)

音楽:(Bill Evans, Miles Davis, Dvořák, Linkin Park, Rammstein, Killswitch Engage, Enigma外)気に入れば何でも。

書物:ノンフィクション、歴史(ローマ史、古代ギリシャ,WW2外)、SF(ホーガン、ハインライン外)、最近はOsprey社の本ばかり。主にマクブライド先生のやつばかり。

漫画:(大陸軍は世界最強とかアララララーイとか)雑食。

ゲーム:ROME TOTAL WAR、MEDIEVAL TOTAL WAR
     CALL OF DUTY、S.T.A.L.K.E.R、SILENT HUNTER外

好きな陛下:Marcus Aurelius Antoninus、Flavius Claudius Julianus
好きな甲冑:ロリカ・セグメンタータ
好きなヴァンツァー:フロスト
好きなマクナブ:受領通知!!、カチカチ、カチカチ、続刊はいつですか。
以下、好きなギボン、サトクリフ、パウルカレル、スティーブンハンター、フォーサイス、ルカレ、エルロイなどと八万行に渡って続くので割愛。

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