言葉ではなく行動


 Facta non verba
 言葉ではなく行動
 ――ラテン語の諺

 不言実行

 いや、特に何をするでもないですけど。
 むしろ何もしない、という欲求の方が大きいです。
 が、残念ながら人間社会は常に何かをする事を要求するのですよね、時間に追われて。
 締切、集合時間、起床時間……。不作為、無為は許されない。
 
 それはさておきジオニックフロントのリメイク?が出るのですね。
 懐かしい。
 

・軍団兵は許可なく死ぬことを許されない。

 どこの海兵隊だよ、という具合になってしまいましたが。
 自分のイメージは固定されて、なかなか変えがたいようです。

ローマ軍の物語Ⅳ ①

ローマ軍の物語Ⅳ ②

ローマ軍の物語Ⅳ ③

ローマ軍カードゲーム①
ローマ軍カードゲーム②
ローマ軍カードゲーム④
ローマ軍カードゲーム③

 懐かしきMTG風のカードはジェネレータが面白かったので戯れに作ってみました。
 数値も内容も適当。

 以下pixivより

 ローマ軍の物語Ⅳ“ヘラクレスの不在”

 シグナクルム(認識票)を受領し、トラヤヌス帝へのサクラメントゥム(忠誠宣誓)を経て俺は軍団兵になったが、それはまだ書類上の事に過ぎなかった。焼いてないパン種みたいなものだ。祖父の言う“本物の軍団兵”になるには、やるべき事が山ほどあった。
 訓練だ。基礎訓練は想像以上でも以下でもなかった。死んだ方がマシだと思うほどきつい、という話を祖父から聞いていたからだ。要するに実際、死ぬほどきつかった。

 訓練の初日、練兵場でどうすればいいか分からずに広場の鳩みたいにばらばらに突っ立っていた俺達新兵の前に、男が二人、まるで全世界に君臨する支配者の様に堂々とやってきた。先を行く男は歳は30前後で大柄ではないが、トゥニカの袖や裾から覗く手足はどう見ても軍団兵のそれだった。左目の下にある横薙ぎの傷のせいで常に人を睨み付ける様な形相をしていたが、元々そういう顔だったのかもしれない。

 とにかく、どんな衣装を着てもそれがケントゥリオ(百人隊長)だと分かった筈だ。漲る自信と威厳、肝の据わった態度、雷鳴の様に響く声、仮にギリシア悲劇の仮面を被ってもあの迫力は隠せないだろう。対照的にもう一人の副長と思しき長身の男は捉え所の無い目つきと静けさが印象的だった。

 隊長はその名がケリアリスで、百人隊指揮官である事を告げ、まるで元老院議員の挨拶みたいに荘厳な言葉遣いでヘシオドスを引用し、無秩序に立ち尽くす俺達を天地開闢以来の能無しだと罵ると、最後に炯々とした目でこう付け加えた“だが安心しろ、俺が何もかも教えてやる。立ち方、座り方、歩き方に眠り方、飯の食い方からクソの始末、そして殺し方、何もかもだ。泣こうが喚こうが全員きっちり軍団兵にしてやる!”。

 あまりの迫力にちびりそうだったが、それから整列、行進、隊形変更の訓練で聞く事になる滑らかで流麗な罵詈雑言の嵐と比べれば、やはりあれはちょっとした景気づけの挨拶だったのだろう。

 数日の訓練を経て、不良やごろつき風の連中が調教された馬みたいに大人しくなったのが印象的だった。ここで粋がったところで、副長や百人隊長の懲罰棒に頭をかち割られるだけだ、という事が分かる程度の脳みそは持っていたらしい。未来の戦友が俺より馬鹿ではない事をいとも慈悲深き神々に感謝せざるをえなかった。

 全部で80人の俺達は10組のコントゥベルニウム(テント組、班)に分けられ基礎体力をつける為に走ったり、徒手格闘や装備の扱いなど様々な訓練を受けた。
 とにかく最初に叩き込まれたのは整列と行進、通常と全速の2種類の軍団歩幅、そして幾つもの隊形と穴掘りだ。どれもシシュポスの岩みたいに終わり無き繰り返しだったが、目的がはっきりしている分、街にいる時よりも気が楽だった。

 何より素晴らしい事に新しい友達が出来た。戦闘訓練で二人組になったクイントゥスは名前通りの五男で、俺の入隊理由を聞いてゲラゲラ笑った。要するにこの魚屋の息子は俺とほぼ同じ境遇だった訳だ。だが俺は四男で、奴は女に振られて決心した、という点も含めて聖なる神託に委ねた俺の方が勝っていると信じたい。

 流石に人生の一大事を賽子で決める様な馬鹿はいなかったが、班には色々な奴がいた。全員がローマ風の名前だが代々本土出身のローマ人は俺とクイントゥス、アウルスとサルウィウスだけだ。ガリア系のティトゥス、ゲルマン系のマルクス、ルキウスは先祖がエジプト人だ。とはいえ裕福なのに兵隊に憧れる妙な奴、ギリシアから来たガイウスも含め皆悪い奴ではなかった。

 そもそも俺達の最大の敵はケリアリスとその訓練であり、出身を理由に仲違いをする余裕などなかった。それに問題を起こしたら連帯責任だ。誰が原因かなんて関係ない。実戦なら一人の失態が全員に損害を与えるからだ。面倒の種を蒔く奴が仲間からどう扱われるかなんて分かりきった事だろう。心身ともに襤褸切れの様にくたびれる毎日だったが、俺は仲間が出来てほっとしていた。

 俺達は歩き方、人間の急所の位置、そこを壊すのに派手に手を動かす必要は無い事、どこであれ友はいるという事を“身を以て”学んだ。

――つづく――
次回、ローマ軍の物語、第5話“マルスの申し子達”ROMA AETERNA EST!!
 
 トラヤヌス:元老院から”至高”の称号を贈られた13代皇帝(在位98年-117年)。帝国の最大版図を達成した。

 忠誠宣誓:皇帝への忠誠宣誓。待遇への不服や政治的理由により宣誓拒否が相次ぎ、内乱が起きる事もある。故に軍団の機嫌を損ねた皇帝は長生きできない。親衛隊もまた然り。ローマ軍団は帝国の強力な武器であり、同時に致命的な弱点でもあった。

 百人隊長:ローマ軍団の背骨。最小単位のコントゥベルニウムを10個合わせた80人からなる百人隊の指揮官。百人隊長にも階級があり上位の者はより多くの兵を率い、作戦会議に出席する権利を持つ。ローマ軍という組織を理解する上で欠くべからざる存在。

 副長:オプティオ、隊長代理・補佐。戦闘時は部隊の後方や側面で列を乱す兵士や勝手に退く者を見張り、隊形を維持する為にハスティレー(棒)で押したり小突いたりする。

 懲罰棒:職杖、指揮杖、懲罰棒。呼び名は色々だが、多くは堅い葡萄の蔓製。多分、どの用途でも主に殴打に用いられただろう。

 コントゥベルニウム:テント組。野営地の天幕、食事等生活を共にする8人の班。

 整列と行進、歩幅:ローマ軍団は整然とした隊形と迅速な行進をもって他の勢力を凌駕する機動力と戦闘力を発揮した。定められた歩幅・歩調は部隊の速度と移動距離を規格化し、作戦の立案・遂行を円滑にした。この為、全ての軍団兵は初期の段階でこれらを体に叩き込まれた。良く歩く兵士こそが戦いに勝利する!

 シシュポスの岩:ギリシア神話の逸話。シシュポスは巨大な岩を山の上まで運ぶ罰を受けるが、山頂到達直前でいつも岩が転がり落ちていく。それが永遠に繰り返される。転じて現代では果てなき徒労を意味する。社畜か…。

 クイントゥス:五番目を意味するラテン語の名前。日本人で言う五郎。クァルトゥスは四郎。ローマ人の名は個人名・氏族名・家族名と並び、個人名の数は少ない。混雑した街中で知り合いを見つけてルキウスだとかマルクス等と呼ぶと大勢が振り返るだろう。故に公共の場で個人名で人を呼ぶ事はあまりなかった模様。

 色々な奴:入隊の第一条件はローマ市民である事。つまり人種や出身地は問われない。そもそもトラヤヌス帝が属州出身者であり、ガリアやアフリカ出身だろうが市民であれば志願は可能だった。文化も宗教も不問だが、皇帝の神格化、忠誠宣誓などがキリスト教などの教義と衝突し問題となる事があった。

 裕福な:軍務はいつの時代も楽ではなく、ローマが拡大し、時代が下るにつれ、イタリア本土出身の軍団兵は減った。豊かになり、他の職業に比べ相対的な魅力が下がったのだろう。特に裕福な家の者が将校ではなく兵卒になる事は稀だった。帝国の防衛は次第に属州出身者やゲルマン人達が担う様になった。

 急所:軍団兵は戦闘において素早く人体の急所を攻撃し、効率的に敵を殺傷する様に教育された。特に盾で殴りつけ、のけぞる敵の腹(内臓を防護する骨が無い)を突き刺すのは最も基本的な動作だった。

 以上

 ケリアリス百人隊長は心の平穏がどうとか言っているので、アパテイアとかアタラクシアとかそういった類の概念について言及しているのかもしれません。ストア派の影響を受けているのやも。

 百人隊長は軍曹とか下士官のイメージで語られる事が多く、実際私もそんな風な文を添えてしまっていますが、少し違うようです。幾つかのランクに分かれており、上級の百人隊長はもっと大きな部隊を率いたり、重要な会議や交渉の場に
出席する事もありました。故に単純に叩き上げの指揮官や訓練教官のイメージで見ると実際とは異なるかもしれません。もっと上から下まで人ぞれぞれ、幅広い役割を担っていたようです。

 武装はよく見る百人隊長の装束にしました。どちらかというと1世紀中頃の装備に近いかもしれません。脛当て、ファレラ(円形の金具)やトルク付きの鎖帷子、軍団の典型的な赤い外套、剣は左腰で短剣(プギオ)は右腰ですが今回は訓練という事で木剣、グラディウスは外しました。盾は旗手などが持っている丸いものを。ハドリアヌス帝などは髭を生やしてましたが、典型的なローマの軍人ということで髭は無し、短髪で。

 早速しごかれてる新兵達が持っているのは柳細工の訓練用の盾です。盾の取っ手の位置や補強はほぼ想像なので怪しいですが、木剣や盾はわざと重くして実物より負荷をかけて訓練する事もあったのだとか。

 後ろの兜に羽根がついている将校の持っているのは戦闘時に戦列を整える為のものです。軍団は大河ドラマや映画で見る様な喚声を上げて、バラバラに突撃して敵も味方もゴチャゴチャの乱戦はせず、部隊ごとに歩調を合わせて戦う事を基本としていたので勝手に前に出たり、列を離れたり、逃げようとする者は棒で殴られたでしょう。18-19世紀の戦列歩兵などは短銃やサーベルで将校に撃たれたり斬られたりする羽目になったでしょうけど。

 次回は正式な装備に切り替えて、重装歩兵の密集隊形を描く事にします。
 誰が得をするのかと言う暑苦しい重装歩兵祭りです。

 しかし新規編制の何の戦功もない百人隊の軍旗はどうすればいいんだろうか……。
 何もつけないって訳でもないだろうし。

 また飽きもせず大量の軍団兵を描くので少し時間がかかるでしょう。

今回はこの辺で。続きが描けたらまたお会いしましょう。
 ローマ市民ならびに元老院議員、そして軍団兵諸君にマルスとユピテルの助力あれ。
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軍団兵履歴

Legionarius

Author:Legionarius
主に世界史・戦史(東西問わず)の絵を描いております。

形式:Legionarius
状態:製造年月日から30年以上経過
使用燃料:Laphroaig,Bowmore,
Ballantine(12年が好ましいが財布が薄いのでfinest)
エンジン形式:惰性型酒冷4ストロークバルブ108気筒
始動形式:諦念あるいは深い溜息
搭乗機:CBR600RR07白→CBR1000RR2012に機種転換(乗り手に過ぎる良い機体ですがハイオクは財政が……)

音楽:(Bill Evans, Miles Davis, Dvořák, Linkin Park, Rammstein, Killswitch Engage, Enigma外)気に入れば何でも。

書物:ノンフィクション、歴史(ローマ史、古代ギリシャ,WW2外)、SF(ホーガン、ハインライン外)、最近はOsprey社の本ばかり。主にマクブライド先生のやつばかり。

漫画:(大陸軍は世界最強とかアララララーイとか)雑食。

ゲーム:ROME TOTAL WAR、MEDIEVAL TOTAL WAR
     CALL OF DUTY、S.T.A.L.K.E.R、SILENT HUNTER外

好きな陛下:Marcus Aurelius Antoninus、Flavius Claudius Julianus
好きな甲冑:ロリカ・セグメンタータ
好きなヴァンツァー:フロスト
好きなマクナブ:受領通知!!、カチカチ、カチカチ、続刊はいつですか。
以下、好きなギボン、サトクリフ、パウルカレル、スティーブンハンター、フォーサイス、ルカレ、エルロイなどと八万行に渡って続くので割愛。

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