戦時に法は沈黙する 

 戦時に法は沈黙する――キケロ 国家論

 法は最終的に何によって保障されているのか。

 ずいぶん間が空きましたね。いや、違うんです、サボってたとかそういうのではなく。
 アサシンクリード4が楽しすぎてカリブ海をうろうろしながら、何の罪もない商船を襲ったり、軍艦に喧嘩をふっかけたり、とか全然そんなことはないのです。
 嘘です。極悪非道、残虐無比の限りを尽くしていました。イギリス船籍もスペイン船籍もお構いなしで襲っていたら、終いには寄港先がなくなるんじゃ…。やはり、目指すは海賊共和国か。ニュー・プロヴィデンスで黒髭と握手。

 相変わらず船は風向きの影響をあまり受けずに飛ぶような速さだし、物凄い速度で舵が利き、着桟時はバウスラスターでもついてんのか、と言うような見事な平行着桟を披露してくれるので海洋冒険小説大好きっ子の方々は気に食わないかもしれませんけど、そこはゲームですので。
 サイレントハンターも実際と同じ時間経過でプレイしたら終戦までリアルタイムでやる羽目になりますしね。ある程度のデフォルメはしょうがない。
 大切なのは重要な要素を抑えているか。酔っ払い、気の短い船員達、飛び散る木っ端に硝煙、風を孕む帆、波飛沫に荒削りな船乗りの歌。勝利の喚声と敗者の断末魔。素晴らしい出来だと思います。鮮烈な青い海、白い砂浜と碧に透ける浅瀬、堪らない世界です。ラム酒を呷りながらやるのが良さそうです。

まだ序盤なので今後どうなるのか分かりませんが、主人公が現代的な正義感や博愛主義、平和主義を振りかざさないところが良いです。目的の為なら平気で商船を略奪して、抵抗すれば躊躇なく乗組員や海兵を殺傷する。海賊と名乗っておきながら海賊行為をしないどこかの海賊とは違います。
 歴史を題材にしていながら蓋を開けてみれば現代劇という作品は幾らでもありますが、そういったものとは少し違うようです。

  
ウクライナが一大事だそうで、驚くべき事件ではあるけれど、戦史や歴史をずーっと見ていくと人類が何千年もやってきた事はそうは変わらないという気がします。複数の大勢力の狭間にある国がどこの傘下に入るか、誰が影響力を保持できるか。ローマ帝国とパルティアはアルメニアで揉めてましたし。

 流石に21世紀ともなれば、普段は高度な技術や上品な言葉遣いで綺麗なラッピングに包まれてますが、薄皮を剥けば中身は同じ。弱肉強食の獣の世界から、少なくとも薄皮を纏う事が出来る水準までやってきた、ということは凄い事なのかもしれませんが。
 限られた大きさのケーキを切り分ける時にその大きさを決めるのは、最終的には経済力に軍事力。
 どれほど複雑化し、洗練されているように見えても、いまだその原理は変わらないのでしょう。

 などと、いつまでも他人事でいられるかどうか。


・チキンと私

 70億人も人間がいれば、そりゃあ面倒臭い人間もいます。
 草食系どころか植物系なのではないか、というくらい静かに暮らす事を至上としている私の様な人間もいれば、わざわざ余計な事をして騒がしいどころか周囲に積極的に迷惑をかける人間もいるようです。
 
 植物は一見静かですが他の植物との生死を懸けた激しい日照の奪い合い、虫や微生物との昼夜を分かたぬ熾烈な戦いを繰り広げているけれど。でも見た目は静か。そもそも草食動物の繁殖力は捕食に対抗すべく頭数を揃える為に肉食動物より旺盛だと思うのですが…いや、そういう話じゃないですね。草食系とか肉食系とかいったイメージの話で皆が盛り上がっている時にこういう事を話すと顰蹙を買いそうです。

 で、某フライドチキンのフライドフィッシュが復活したそうなので、昼に鳥と一緒に喰うかと、慎みや恥じらいというものを知らぬ、恥ずべき米帝文化の尖兵を帝都の水際で阻止すべく店に赴いたわけであります。

 すると、店の外まで行列が出来ており、寒いというのに外まで並んでいるのです。ファーストフードで並ぶのはどうか、と思ったのですが、数年ぶりだし、外まではみ出しているのは数人だったのですぐに注文できるだろうと並んでみたのです。が、何故か進みが遅い。

 ようやく店内に入りレジを見やると三つのレジの内、稼働しているのが二つでその内一つが全く機能していないのです。機械が故障しているのではなく、60半ばくらいの男性客が店員に絡んで、仕事が進まないというわけです。
 曰く、最初に注文を全部言ったのに、何で最後に確認するんだ。お前の仕事はそんなに不確実なのか、マニュアルの受け答えや営業スマイルは気持ち悪いからやめろ、店長を出せ、などと…。

もぅマヂ無理。
 
 マーカス「こりゃダメだ、ドーンハンマーを使おう」
 アーニャ「店舗が壊れるから使えないわよ」

 この手合いは往々にして自分が何処で何をしているかすら認識していない。周りにどれほどの迷惑を与えているかなんて意識にすら上らないのです。自分の中の崇高なルール、何かの聖域に触れられようものなら全てに優先して“それ”の防衛と正当性の証明に没頭し、周囲はおろか自分にすら何の益ももたらさないばかりか、時間とエネルギーの損失になるという計算すら出来なくなる様で。

 当然店員は何か余計な事を言おうものなら面倒が長引くのが目に見えているので、気が触れている客には反論せず、すみません、申し訳ございません、と繰り返しておりましたが、他の客は大迷惑です。

 お望みの高級なサービスが欲しいならレストランにでも行けと。ここは私の様な無産市民が効率重視で脂ぎった鳥を貪る店なのだから、ぐちゃぐちゃと余計な事を言う輩はとっとと失せろ、と言いたい所でしたが、残念ながら私は“骨なしチキンのお客様”(全編に渡り、これが言いたかっただけ)なので様子を眺め、静かに待ってました。

 ここが現代の日本ではなく、ローマのスブッラ地区だったら、古代ローマカラテを喰らわせて店から引きずり出した挙句、二度と出歩いて世間様にご迷惑をお掛けしない様にクロアカ・マキシマ(ローマの下水道、最後はテヴェレ河に注ぐ)に放り込むところでしたが、残念ながらここは21世紀のふれあい大国日本なので実力行使はご法度なのです。
 もし私が皇帝ならコロッセウムで腹を空かせた野獣の前に放り出すところです(コンモドゥス役のホアキン・フェニックスみたいにニヤニヤしながら)。余は慈悲深いので泣いて謝ったら許してもいい。それだけ、無産市民の平日唯一の楽しみ“食事”を邪魔した罪は重いのです。 
  
 何かの病気か加齢で脳が委縮して機能を喪失し、羞恥心や自制心や忍耐力を失うとかいう不運なら、まだしょうがないかもしれませんが。もし脳みそに何の問題もないのにそういう事をやっているのならまさに終わってるとしか…。
 立場上弱い店員を怒鳴りつけ、日頃の不満や鬱憤でも晴らしているか、それとも自己の優越の確認でもして哀れな自尊心を満たしているのか。
 
 年をとり物理的に脳の機能が衰えていけば、そうなる可能性は誰にでもあるのでしょう。容貌や体力の衰え、そして死は必然として粛々と受け止めるでしょうが、自我が崩壊して、周囲に厄介を振り撒く恥ずべき存在になるというのは結構な恐怖です。少なくとも自力が及ぶ限りは面倒な人間にはならない様にしようと、肝に銘じたのであります。

 年長者が敬意を払われるのは、かつては希少であった事、価値ある経験や知識の蓄積を備え、年齢に相応しい振る舞いをするから、というのが一つの要因としてあると思うのですが、高齢化が進めばその希少性は相対的に失われていくわけで。おまけに厄介者となればどう扱われるか…。
 人に尊敬されたいとは特に思いませんが、せめて鬱陶しい存在だと思われない程度には気をつけようかと。最後はソイレント・グリーンのホームみたいなところへ…。スイスには類似の施設・組織があるようですが。

 久しぶりに食べたフライドフィッシュはサクサクでなかなか悪くない味でしたが、直前の不快な光景のせいで台無しでした。 ともあれ、カルタゴが滅ぶべきであるように、面倒を引き起こす輩も滅ぶべきなのです。静寂と平穏を乱す者に滅びと災いあれ。というかこの孤独のグルメみたいなコーナーはいったい……。味に言及しているのがいつも最後の一行だけという…。
 
  モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず
  自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ
  独りで静かで豊かで…――井之頭五郎

  五郎さんもそう仰ってるんだし、静かに食えと。アッピア街道沿いに磔にしてやろうか、と。


 ・豊かな暮らし
  
 西暦103年頃のローマにおける別れと旅立ちの図
 
  ローマ軍の物語Ⅲ 別れ

 お絵描きはこんな具合で進めております。かつてポンペイを歩いた時の記憶と土産で買った資料、フィレンツェの古い市街を彷徨った時の光景が混じっているかもしれません。

 さすがに一般家庭への上下水道や電気ガスはなかったですが、現代の都市生活の外観は古代ローマの時代にほぼ整っていたようです。2,000年前だというのに3-4階、6-7階の巨大な集合住宅(インスラ)が立ち並び、市外を埋め尽くす様は地方出身者には驚くべき光景に見えた事でしょう。
 
 ある程度の規模の都市ならば水洗式の公衆便所が設置され、水源まで行かなくても、井戸を掘らなくても一階や表通りの水槽まで水道橋や水道管で生活用水が供給され、公衆浴場などが完備されていました。都市住民は畑で収穫したり、森や海で獲物を捕まえなくても、市場や商店に行けば何でも揃い、近所の食堂やパン屋に行けば完成品の惣菜や焼き立てのパンを買う事ができました。

 富裕層は自前の水道管を設置したり、自宅に風呂を持っていたそうです。メインの水道管に勝手に枝の管を繋げて自分の家で水が出るようにする狡猾な人もいたそうですが、あまり増えると水圧が下がってばれたでしょうね。
 
 そうした高度な施設はローマが滅亡した後はどれも久しく失われてしまいました。維持する予算もなく、また知識も技術も衰退したのでしょう。

 我が国を見るに史上稀に見る便利な生活を手にし、少なくとも疫病や飢饉で生命を脅かされる事もそうそうなく、かつ世界でも有数の平和な国だというのに、すべての人が人生に快哉を叫んでいるかと言うとそうでもないのですよね。いじめとか格差社会とかブラック企業とか色々あるのでしょうけど。それは古代ローマの遺跡に残された落書きにおいても喜びと怨嗟の声が入り混じっていることからしても同じの様ですが。

 どれほど豊かで便利になっても人間の境遇は偏り、その欲求は満たされる事無く、際限なく渇きを覚えるのでしょう。そのおかげで、様々な技術が発展し、知識や情報が世に溢れる様になったのでしょうけれど。一方で社会に流布する過剰な消費を煽る広告の洪水、本質を見失った衒示的・誇示的消費など…。キラキラと輝くもの、あるいは輝いているかのように見せかけているもの、まるで尊い価値があるかのように陳列され、掲げられているもの、欲する様に教唆されたもの、そうしたものを延々と追い続ける限り、鼻先の餌を追う駄馬の様に馭者の思うがまま、使役されるのではないでしょうか。自覚的であれ、無自覚であれ、どちらにしても。永遠に、底抜けの甕に水を注いでも満ちる事は無い様に。

とはいえそうした消費が現在の経済を回しているのも確かなのでしょう。そして大量消費と生産の片棒を担ぐ私もその利益を享受している事になるのでしょう。一方で、その手の消費をほとんど放棄せんとする人間にとっては、必需品が安価に供給される今の消費社会こそ住み心地が良いのかもしれません。

 底抜けの甕を捨ててしまうか、あるいは己の力量に相応の深さに底を宛がい修理するか、どこかで自分の最も望むものを見極め、それには何が必要なのか、何が必要でないのか、自分はそれに至る道にあるのかを考えないと死ぬまで良い様に賢い人達の商売につき合わされ、踊らされるのではないか、と最近はそう思います。知らず、時間と資産と労力を搾り取られて。

 そういう賑やかなお祭り騒ぎを遠くから眺めるのは嫌いではないですが、お祭りに身を委ね、進んで巻き込まれるのが好きだという人もいるのでしょう。どちらかと言えば、私はどこで誰と、あるいは一人でいつ、そして踊るか踊らないかは自分で選び、静かに自由に暮らしたいものです。
  
 何の話でしたっけ。脱線も甚だしいですが、次回は古代ローマ人の生と死、寿命などの統計データに触れ、引き続き古代世界を巡る事と致しましょう。脳みそがあればどこにだって行けるのです。

 
 今回はこの辺で。続きが描けたらまたお会いしましょう。
 ローマ市民ならびに元老院議員、そして軍団兵諸君にマルスとユピテルの助力あれ。
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軍団兵履歴

Legionarius

Author:Legionarius
主に世界史・戦史(東西問わず)の絵を描いております。

形式:Legionarius
状態:製造年月日から30年以上経過
使用燃料:Laphroaig,Bowmore,
Ballantine(12年が好ましいが財布が薄いのでfinest)
エンジン形式:惰性型酒冷4ストロークバルブ108気筒
始動形式:諦念あるいは深い溜息
搭乗機:CBR600RR07白→CBR1000RR2012に機種転換(乗り手に過ぎる良い機体ですがハイオクは財政が……)

音楽:(Bill Evans, Miles Davis, Dvořák, Linkin Park, Rammstein, Killswitch Engage, Enigma外)気に入れば何でも。

書物:ノンフィクション、歴史(ローマ史、古代ギリシャ,WW2外)、SF(ホーガン、ハインライン外)、最近はOsprey社の本ばかり。主にマクブライド先生のやつばかり。

漫画:(大陸軍は世界最強とかアララララーイとか)雑食。

ゲーム:ROME TOTAL WAR、MEDIEVAL TOTAL WAR
     CALL OF DUTY、S.T.A.L.K.E.R、SILENT HUNTER外

好きな陛下:Marcus Aurelius Antoninus、Flavius Claudius Julianus
好きな甲冑:ロリカ・セグメンタータ
好きなヴァンツァー:フロスト
好きなマクナブ:受領通知!!、カチカチ、カチカチ、続刊はいつですか。
以下、好きなギボン、サトクリフ、パウルカレル、スティーブンハンター、フォーサイス、ルカレ、エルロイなどと八万行に渡って続くので割愛。

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